本音と建前。
この2つの言葉は、誰もが知っているのに、きちんと説明しようとすると少しむずかしく感じるものです。
「本音を言ったほうがいいの?」
「建前って、悪いことなの?」
そんなふうに迷ったことはありませんか。
職場では空気を読み、友人関係では波風を立てないように気をつかい、家族の前でもつい言葉を選んでしまう。
気づけば、本音をそのまま出す場面は意外と少ないものです。
でも、本音と建前はどちらかが正しくて、どちらかが間違っているというものではありません。
どちらも、人との関係を大切にしながら生きていくために生まれた、大人の知恵でもあります。
この記事では、
本音とは何か、本音と建前の違い、そして本音とうまく付き合っていくための考え方を、やさしく整理していきます。
「本音を言えない自分はだめなのかな」と感じている方も、
読み終えるころには、少しだけ心が軽くなっているはずです。
本音ってなに?大人になるほど見えにくくなる気持ちの正体

本音とは、心の中にある本当の気持ち
「本音」とは、心の中で本当に思っている気持ちのことです。
誰かに合わせたり、場の空気を読んだりする前の、いちばん素直で飾らない自分の声ともいえます。
✅たとえば──
本当は疲れているのに「大丈夫」と言ってしまったり、
寂しいのに「平気だよ」と笑ってしまったり。
そういう言葉の奥にあるのが、本音です。
大人になるほど本音は見えにくくなる
私たちは子どもの頃は、もっと自由に本音を出していたはずです。
うれしいときは笑い、嫌なときは嫌だと言えたものですよね。
でも大人になるにつれて、人間関係や立場、役割が増えていく中で、
少しずつ本音を外に出す機会は減っていきます。
それは決して悪いことではありません。
社会の中で生きていくために、言葉を選ぶ力が育った証でもあるからです。
本音を押し込めると自分の気持ちが見えなくなる
ただ、本音を押し込めたままにしておくと、
自分でも自分の気持ちがわからなくなってしまうことがあります。
「本当はどうしたいのか」
「何がつらいのか」
そうした感覚がぼんやりしてしまい、気づけば心の中にモヤモヤがたまってしまうのです。
本音はわがままではなく心のサイン
本音とは、わがままや自己中心とは違います。
自分の内側にある、本来の気持ちに気づくための大切なサインです。
まずは「私は今、どう感じているのかな」と、
そっと自分に問いかけてみること。
それが、本音と向き合う第一歩になります。
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本音と建前の違いとは

本音は「心の中の本当の気持ち」
本音とは、自分が本当に感じている気持ちや考えのことです。
うれしい、つらい、やりたくない、本当はこうしたい──そんな内側の素直な声が本音です。
誰にも見せていない感情や、言葉にするのをためらっている思いも、本音に含まれます。
建前は「相手や場に合わせた言葉」
建前とは、人間関係や場の空気を考えて選ぶ表向きの言葉です。
本当は疲れていても「大丈夫です」と言ったり、断りたいけど「また今度にします」とやわらかく伝えたりするのが建前です。
相手を傷つけないためや、場の雰囲気を壊さないために使われる、大人の配慮ともいえます。
本音と建前はどちらも必要なもの
本音は正直さ、建前は思いやり。
どちらかが良くて、どちらかが悪いというものではありません。
本音だけだと関係がぶつかることもあり、建前だけだと自分が苦しくなることもあります。
だからこそ私たちは、場面によってこの2つを使い分けながら人と関わっているのです。
違いをシンプルにまとめると
本音は「自分の心の声」、建前は「人との関係を守るための言葉」。
この違いを知っておくだけで、「言えなかった自分」を責めすぎずにすむようになります。
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なぜ人は本音を隠してしまうのか
嫌われたくないという気持ちがあるから
本音を言ってしまったら、相手を傷つけてしまうかもしれない。
関係が気まずくなるかもしれない。
そんな不安があると、人は自然と気持ちを飲み込んでしまいます。
「いい人でいたい」「波風を立てたくない」という思いが強いほど、本音は心の奥にしまわれていきます。
空気を壊したくないという配慮
その場の雰囲気や周りの気持ちを考えると、「ここで本音を言うべきじゃない」と感じることがあります。
特に職場や家族の中では、ひとりの言葉が場の空気を変えてしまうこともありますよね。
空気を読む力がある人ほど、無意識に本音を抑えてしまう傾向があります。
大人になるほど役割が増えるから
大人になると、仕事、家庭、人間関係など、さまざまな立場を抱えるようになります。
「母だから」「上司だから」「大人だから」と、求められる役割に合わせて振る舞ううちに、本音よりも“ふさわしい言葉”を選ぶことが増えていきます。
それは弱さではなく、責任を持って生きている証でもあります。
本音を隠すのは優しさの裏返し
本音を隠してしまうのは、決して悪いことではありません。
相手を思いやる気持ちや、関係を大切にしたいという優しさがあるからこそ、言葉を選んでいるのです。
ただ、ずっと隠し続けていると、自分の気持ちまでわからなくなってしまうことがあります。
だからこそ、ときどきは「私は本当はどう思っているのかな」と、自分の心に目を向けてあげることが大切です。
本音をその場で言えないと、あとから「実はあのとき…」と気持ちが出てくることもあります。
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本音を言えない人の特徴と心理

相手を優先しすぎてしまう
本音を言えない人は、自分の気持ちよりも相手の立場や気分を先に考えてしまう傾向があります。
「これを言ったら困らせるかも」「気まずくなるかも」と想像してしまい、結果として言葉を飲み込んでしまうのです。
✅たとえば、
忙しいときに仕事を頼まれても、本当は難しいのに「大丈夫です」と答えてしまう。相手を優先する優しさが、本音を隠す理由になっています。
否定されたくないという不安がある
本音は、その人にとって大切な気持ちです。
だからこそ、それを否定されたり軽く扱われたりすることへの怖さがあります。
「わかってもらえなかったらどうしよう」
「重たい人だと思われたら嫌だな」
そんな不安が、本音にフタをしてしまいます。
✅たとえば、
つらいことがあっても「こんな話しても迷惑かな」と思い、笑って話題を変えてしまうような場面です。
自分の気持ちがわからなくなっている
長いあいだ本音を抑えていると、「本当はどうしたいのか」が自分でも見えにくくなってしまいます。
周りに合わせることが当たり前になるほど、自分の気持ちより“正解らしい答え”を選ぶ癖がついてしまうのです。
✅たとえば、
何を食べたいか聞かれても「なんでもいいよ」と答えることが多い人は、自分の本音を後回しにする習慣が身についているのかもしれません。
強く見られやすい人ほど抱え込みやすい
しっかりしている人、頼られることが多い人ほど、「弱音を見せてはいけない」と感じやすくなります。
周りからは平気そうに見えても、内側ではたくさんの気持ちを抱えていることも少なくありません。
✅たとえば、
周囲の相談には乗るのに、自分の悩みは誰にも打ち明けられない。そんな姿は、責任感の強い人に多く見られます。
本音を言う=わがままだと思い込んでいる
自分の気持ちを伝えることを「わがまま」「自己中心的」と感じてしまう人もいます。
そのため、本音を言うこと自体に罪悪感を抱きやすくなります。
✅たとえば、
本当は予定を変更したいのに、「迷惑をかけたくない」という気持ちから黙って合わせてしまうような場面です。
本音を言えないのは優しさの裏返し
本音を言えない人は、決して冷たいわけではありません。
むしろ、人との関係を大切にしたい、傷つけたくないという思いが強いからこそ、言葉を慎重に選んでいます。
だからこそ、「言えない自分」を責めすぎる必要はありません。
それは、周りを思いやってきた証でもあるのです。
本音を言えない気持ちは、とても繊細で、人それぞれ理由や背景が違います。
「どうして私は言えないんだろう」と感じたときは、その心理をもう少し丁寧に見つめてあげることも大切です。
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本音を言うメリットとデメリット

本音を言うメリット
本音を伝えることには、心が軽くなるだけでなく、人との関係を深める力があります。無理をして合わせ続けるよりも、自分の気持ちを少しずつ出していくことで、安心できる関係が育っていきます。
✅たとえば──
✔ 仕事で無理な依頼をされたときに「今日は難しそうです」と正直に伝えたら、業務量を調整してもらえた
✔ 友人に「最近ちょっと疲れてる」と話したら、無理に誘われることが減り、気持ちがラクになった
✔ 家族に「ひとりの時間がほしい」と言えたことで、イライラせず穏やかに過ごせるようになった
このように、本音を少し伝えるだけでも、自分を守れる場面は意外と多いものです。
また、本音を見せてくれたことで「信頼してくれているんだな」と感じてもらえ、関係がより深まることもあります。
本音を言うデメリット
一方で、本音は伝え方やタイミングによっては、相手を驚かせたり、誤解を生んでしまうこともあります。正直であることが、必ずしもすべての場面で最善とは限りません。
✅たとえば──
✔ 上司にそのままの不満をぶつけてしまい、「反抗的」と受け取られてしまった
✔ 友人の誘いを正直に断ったら、「距離を置かれている」と誤解された
✔ パートナーに思ったことをそのまま言ったら、言い方が強くてケンカになってしまった
このように、本音そのものよりも「どう伝えるか」で結果は大きく変わります。
本音は大切ですが、相手の立場や状況を考えずに伝えてしまうと、関係にすれ違いが生まれることもあるのです。
大切なのは“全部言うか我慢するか”ではない
本音を言うか、言わないか。
その二択で悩んでしまう人は多いですが、実はその間にはたくさんの選択肢があります。
少し言葉をやわらかくする、タイミングを見て伝える、全部ではなく一部だけ伝える──
そんなふうに調整しながら出していくことも、大人の本音の扱い方です。
本音は「すべてさらけ出すもの」ではなく、「自分を守るために、必要な分だけ外に出していくもの」。
そう考えると、無理に我慢し続けることも、勢いで全部言ってしまうことも、どちらも少しだけ違って見えてくるかもしれません。
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本音と本心の違い

本音は「そのとき感じている率直な気持ち」
本音とは、今この瞬間に自分が感じている素直な思いのことです。
うれしい、嫌だ、疲れた、やりたい──その場で浮かんでくるリアルな感情が本音です。
✅たとえば、
仕事終わりに誘われたとき、
「今日は帰って休みたいな」と思ったら、それが本音です。
すぐに浮かぶ、飾らない気持ちと考えるとわかりやすいですね。
本心は「もっと深いところにある気持ち」
本心は、本音よりも少し奥にある、本当に大切にしている思いや価値観です。
表面の感情ではなく、長く変わらず心の中にある想いとも言えます。
✅先ほどの例でいうと、
本音は「今日は疲れているから帰りたい」ですが、
本心は「本当はその人との関係を大事にしたい」という気持ちかもしれません。
つまり、本音は“今の気持ち”、本心は“根っこにある想い”なのです。
本音と本心がズレることもある
本音と本心は、いつも同じとは限りません。
むしろ、違う方向を向いてしまうこともよくあります。
✅たとえば──
✔ 子どもにイライラして「もう知らない!」と言ってしまった
→ 本音:今はイライラして離れたい
→ 本心:本当は大切に思っているし、仲良くしたい
✔ パートナーに「好きにすればいいよ」と冷たく言った
→ 本音:今は傷ついていて距離を取りたい
→ 本心:本当はわかってほしい、寄り添ってほしい
このように、本音は感情の波に影響されやすく、本心はもっと長い目で見た大切な気持ちであることが多いのです。
違いを知ると、自分の気持ちが整理しやすくなる
「今の私は本音でそう思っているのか、それとも本心は別にあるのか」
そうやって少し立ち止まって考えるだけで、自分の気持ちが整理しやすくなります。
感情のままに言葉にする前に、「本当はどうしたいんだろう」と心に問いかけてみる。
そのひと呼吸が、人間関係のすれ違いをやわらげてくれることもあります。
本音と本心の違いを知ることは、自分の気持ちを大切にしながら、人との関係も守っていくための大切なヒントになるのです。
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本音と上手に付き合う考え方
本音は「全部言うもの」ではなく「大切に扱うもの」
本音というと、「正直にすべて話さなければいけない」と思いがちですが、必ずしもそうではありません。
本音は無理に外へ出すものではなく、自分の中で丁寧に扱うものでもあります。
言うか言わないかではなく、「どう扱うか」という視点を持つだけで、気持ちはずっとラクになります。
言える範囲だけで十分
本音を100%そのまま伝えなくても大丈夫です。
今の自分が言える範囲で、少しだけ言葉にできればそれで十分です。
たとえば「本当は嫌です」とまでは言えなくても、「今日はちょっと難しいです」と伝えるだけでも、自分を守ることにつながります。
本音を守ることも大人の選択
すべての場面で本音を出す必要はありません。
人間関係や状況によっては、あえて言わないほうが穏やかに過ごせることもあります。
本音を言わないのは逃げではなく、自分や相手を守るための判断であることも多いのです。
まずは自分だけには正直でいる
人に言えなくても、自分の中では本音を否定しないことが大切です。
「私は本当はこう感じているんだな」と気づいてあげるだけで、心は少し落ち着きます。
誰にも見せなくていいから、自分だけは自分の味方でいてあげる。
それが、本音と上手に付き合うためのいちばんの土台になります。
本音と建前のバランスが心を守る
本音だけでも、建前だけでも、人は疲れてしまいます。
そのときどきの状況に合わせて、どちらを少し前に出すかを調整していくことが、心の負担を軽くするコツです。
本音は大切な自分の声。
建前は人との関係をなめらかにする知恵。
どちらも否定せず、上手にバランスを取っていくことが、大人として心地よく生きるためのヒントになります。
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本音が言えないときの対処法

まずは「言えない自分」を責めない
本音が言えないとき、「どうして私はこんなに弱いんだろう」と自分を責めてしまう人は少なくありません。
でも、本音を言えないのは優しさや思いやりがある証でもあります。
無理に変わろうとする前に、「今は言えないんだな」とそのまま受け止めてあげるだけでも、心の負担は少し軽くなります。
小さな本音から少しずつ出してみる
いきなり大きな本音を伝えるのはハードルが高いものです。
まずは日常のささいな場面で、小さな気持ちを言葉にしてみましょう。
たとえば、
「今日は少し疲れてるかも」
「これ、私はこう思うな」
そんな短い一言でも、自分の気持ちを外に出す練習になります。
言葉をやわらかくして伝える
本音は、伝え方ひとつで受け取られ方が大きく変わります。
ストレートに言うのが難しいときは、やわらかい表現に言い換えるだけでも伝えやすくなります。
「無理です」ではなく「今日は難しそうです」
「行きたくない」ではなく「今回は見送ろうかな」
こうした言い方にすることで、自分の気持ちも守りながら伝えられます。
書き出して気持ちを整理する
誰かに言えないときは、紙やスマホのメモに本音を書き出してみるのもおすすめです。
言葉として外に出すだけで、頭の中のモヤモヤが整理され、「本当はどうしたいのか」が見えやすくなります。
書くだけなら、誰かを傷つける心配もありません。
自分の気持ちと静かに向き合う時間になります。
すぐに言えなくても大丈夫
本音は、いつもその場で言わなければいけないわけではありません。
時間をおいてから落ち着いて伝える方が、素直に話せることもあります。
「この前のことだけど、本当はこう感じてたんだ」
そんなふうに後から伝えても、人間関係はきちんと続いていきます。
話せる相手はひとりいれば十分
すべての人に本音を話す必要はありません。
心から安心できる相手がひとりでもいれば、それだけで十分です。
家族、友人、ノートに書くこと、あるいは安心して対話できる場所など、自分が落ち着いて気持ちを出せる方法を見つけておくと、無理に我慢し続けなくてすみます。
本音が言えないときは、「言える自分になること」よりも、「自分の気持ちを大切に扱うこと」を意識してみてください。
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